腹の底から快感が全身に響き渡って、興奮のあまり頭が爆発するのではないかと思われた。
間もなく指が子房の手前まで入り込んで、思わず身体をくねらせ背中を弓なりにそらした。
それは不思議な感覚で背筋がビンっと何か痛みのような電流が走り、しかしそれは全く癖になる程の鋭い痛みであった。
圭介は美由紀のそり返って僅かに揺れた乳房にかぶりついた。
そして柔らかくザラザラした部分を集中的に擦るようにして刺激し、段々と指の動かす速さを速めていった。
間もなくして愛撫の気持ち良さに膨らんでいた雌しべを周りの柔らかく熱い花弁が勢いよくぐいっと引き締め、ドミノ倒しに腰から背骨を伝って首元までその官能の色を帯びた衝撃が波打ちながら凄まじい速さで駆け抜けて行った。
圭介は優しく微笑みながら美由紀の頭を撫でてやり、
「気持ち良かった?」
と聞いた。
美由紀もまた微笑みながら子供のように
軽くキスして、乳房を愛撫すると、両足の間に前屈みに座り、舌先でまだ熱くびしょびしょに濡れた雌しべを弄ぶように時折激しい音を立てて舐め回した。
舌の思うように動かない、どこか不器用な感じがいじらしく、それでも尚懸命に舐めてくれるのが嬉しかった。
今度は美由紀の番であった。
仰向けになった圭介のパンツを脱がした。
先程見た時と今目の前に見てるのとは矢張り違って見えた。
先っぽの方が少しばかり濡れていた。
根本を掴んでみると、なる程とても熱く、まるで溶接直後の金属棒のようであった。
何度か上下にゆっくり動かしてみてから、早速口に含ませた。
はじめてであったが、何となく想像で舌を絡ませたり顔を動かしたり、あるいは吸ってみたりしたが、思わずむせてしまった。
それに顎も痛かった。
「大丈夫?無理しなくていいよ」
「ううん、大丈夫。ねぇ、気持ちいい?」
「うん、気持ちいいよ」
美由紀はもう一度、濡れて光沢を帯びた、そり返った情欲の触覚を口に入れて、今度は無理せずに舌を動かしたりして愛撫した。
圭介は天井を見つめながら溶けてしまいそうな顔をして深い吐息に交えてよがり声を出した。
それを上目使いに見ながら、気づくと激しく顔を動かしていた。
顎と首が疲れて上半身を持ち上げると、圭介は起き上がって美由紀を寝かせた。
いよいよはじまると思った。
圭介は美由紀の左脇あたりに右手をついて身体を支えながら、左手でまるで立派なローマ彫刻のような触覚を肉厚な雌しべにあてがうように、ゆっくりと挿入した。
圭介は美由紀の快感に歪んだ美しい顔や汗ばんでつややかに輝く白い肌を見、奥床しく甘美なよがり声を聞いて、彼の腰はそんな視覚と聴覚によって急かされるように段々と動きが速くなった。
二人はキスをした。
そして圭介が美由紀を持ち上げて抱き合いながら、下から上へという風に腰を動かした。
美由紀もまた腰を前後に滑らすように動かして、右手で圭介の髪の毛を掴み抱きついていた。
二人は激しくキスをしていた。
暫くそのままで、圭介は再び美由紀を寝かせると、上半身を立てて腰を敏捷に休みなく動かし続けた。
そして間もなく二人は常人には経験し得ないビッグバンの衝撃が身内に快楽へと変わって全身に広がるのを感じた。
二人は何度もキスをし、身体を撫で合ったりして抱き合いながら行為後特有の静けさを楽しんだ。
圭介の腹が鳴った。
傍らに置いてある目覚まし時計を見た。
十三時を過ぎていた。
「やばっ、ご飯そのままだった!」
二人は急いで着替えて下に降りた。
案の定綺麗に盛られたチャーハンは冷えていた。
この日以来、二人は美由紀の生理の日以外はほぼ毎日両親に見つからぬように交合していた。
二人はこのような行為が正しいとは全く思わなかった。
圭介は取り分けてその事に関して常々悩み苦しんでいた。
しかし背徳感がかえって二人の情欲を駆り立て、より一層これらからの行為から得られる快感に、鋭さが増すのであった。
只これだけ堕落した生活を送っていながら、二人して学校での成績は常に優れていたのは不思議な事であったが、このような事実から誰一人として二人の関係を疑うものは居なかった。
そして一年が経った涼しい夏の日暮、美由紀は堤防の下を流れる川に沿った道を一人歩いていた。
西日が反射して川面が赤く光り輝いていた。
カラスがどこかで鳴いている。
せせらぎが耳に快い。
美由紀は如何にも憂鬱そうな表情をして、何か物思いにふけっていた。
間もなく常磐公園に着いて、千鳥が池の縁の、段になっている所に腰を下ろした。
辺りの様々な種類の木々の緑が夕焼けの逆光を受けて陰影を作っているのが、池の面に
ー「美由紀、もうやめにしないか、この関係。今までの兄妹の関係に戻ろう」
「なんで?もしかして嫌いになっちゃったの?」
「そうじゃないんだけどさ。実は俺彼女できたんだよ」
「そうなの?いつ?」
「一週間前くらいからだったかな、それに兄妹が毎日毎日こんな事してるなんて、たとえ誰にもばれなくったってやっぱり駄目だよ」
「うん、そうだね、、、」ー
昨夜のやり取りが思い出された。
ー「別にこれで一生離れ離れになってしまうわけでもないんだからさ、俺らは特別だったんだよ。美由紀も健全な男女関係を築かないと、きっと後で痛い目あうことになるから、今までの俺らの関係はお互い忘れよう」ー
気づくと辺りは真っ暗になっていた。
今日は日が沈むのが早いなと感じながら、それでもまだ森閑とした園内の景色を眺めていた。
近くに小さな寺がある。
それが何とも不気味であった。
美由紀は木々の間の暗い影から何か出てきて襲いかかってきそうで怖くなり、帰る事にした。
それから時が過ぎて圭介は市内ではなく、遠い田舎にあるO中学校というところに数学の教師として就任して一年生の担任を受け持つことになり、それから一年後に結婚した。
美由紀は東京にあるL大学の法学部に入学して、そこで知り合ったある男子学生と付き合う事になった。
二人はそれぞれ充実した人生を歩んでいる。
互いが一年の間に作り上げた泡沫は、決して割れる事なく今も尚、広い海のどこかに小さく浮いている事でしょう。