マニアック

後は、堕ちるだけ

 優吾さんとの対面は、娘を保育園に預けてすぐ、つまり平日の真昼間から行うこととなった。

 知り合いのいない駅で待ち合わせた私達はそこからさらにレンタカーで移動。

優吾さんは景観の綺麗なコテージを予約してくれていた。

 優しい顔つきの、でもスポーツをしていたであろう体つきの優吾さんは、メッセージでのやりとりの通り話上手で、移動中すら、くすぐったい気持ちにさせられる。

 不思議と、恋愛感情とは別の、まるで遊園地に行く前のワクワク感に似ているから不思議だ。

それを正直に伝えたら「だって不倫じゃないですし」と優吾さんは頷く。

そりゃそうだ。

 

 コテージでは互いにシャワーを浴びた後、ベットへ誘われる。

全裸のまま抱きしめられると、じわじわと溢れ出す幸福感に脳みそが揺さぶられる。

「はぁ……あったかい」

「ね。ハグしているだけでも癒されません?」

「うん……なんだか心の温泉みたい……」

 指先はもちろん、内臓の全てが芯から冷え切っていた私は優吾さんの微熱に絆されるのは必然で。

「ん……ねぇ、もうしたい……」

 別に好きでもない性行為が待ち遠しくてたまらなくなるなんて産まれて初めてだ。

「だめですよ。後30分はこうして抱き合ったまま、おしゃべりしましょ?」

「うぅ……これはこれで生殺しかも……。キスは?」

「キスも、もうちょっと我慢。今したら僕絶対止められないんで」

 

 もうちょっと、なんて焦らすくせに、優吾さんの眼は雄そのもの。

飼い慣らされた肉食獣のようで、ちょっとニヒルにあがる口角にぞくぞくさせられる。

(優吾さんも、私を抱きたいって思ってくれてるのかな)

 とくとくとはやる心臓が直接伝わり、なんだか心地がいい。

いつもなら瞬きくらいの体感で過ぎ去る30分が、永遠にも感じるくらい、ゆったりとした甘い時間に揺蕩たゆたう。

(でも……)

 程よく引き締まった身体につるりとした肌。

若い筋肉とハリのある肌質はたるんだ夫の身体とは何もかもが違う。

「あ……沙也加さん、ハグだけだってば……なんで舐めるの……」

 鎖骨と胸のあたりを舌でなぞると優吾さんはぶるりと震える。

くすぐったいみたいだ。

「だって……美味しそうなんだもん」

 この歳になって、初めて年下の魅力をありありと感じた。

肌が綺麗な相手にそそられるのは男も女も同じなのだ。

目の前の男の存在に私の中の雌があおられる。

 隙間なくぴったりと肌をくっつけあっているのに、全然足りない。

 心拍数があがる私をさらに追い詰めるかのように、優吾さんは耳元で囁く。

 

「ふふ……わかります?」

 ――僕、勃っちゃいました。

 立派に反り返った彼のモノは私の中心部にあてがわれ、太ももで挟むようにされてしまう。

「あ……優吾さんの、熱い……」

「沙也加さんはちょっと濡れちゃってるんですね。まだ触られていないのに」

「ん、いじわる……」

 剥き出しのペニスの熱は私の弱いところを火照らすから余計に感じてしまう。

 血管が浮き出た男らしいそれは、私の秘部にぴったりとくっつく。

じんわりと蜜が溢れたそこを経由するようにゆるゆると前後にされると、ぬちゅぬちゅと卑猥ひわいな音がたった。

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