マニアック

出会いがしらに…

 うーん。人をいじる割にメンタル弱すぎでは?

「……」

 もちろん、合コン再開の雰囲気にはならず。

 男性陣からの「お開きにしようか」の合図で席を立った。

「先輩のせいだ」

 ぼそっと呟く後輩は、もうどうしようもないので放っておくしかない。

「あの、ありがとうございました」

 私は最後まで残り、サラリーマン風の男性二人組にお礼を伝えた。

二人は飄々ひょうひょうとして

「大丈夫? 余計なことしてないよね?」

と、こちらの回答がイエスでもノーでも大して気に求めないような雰囲気で続ける。

「まぁ、あの中で見繕ってもろくな奴らじゃなかったと思って勘弁してよ」

「当然です。感謝しかありませんよ」

「そ? ならよかった。つーか、よかったらこのまま飲まない?」

「え、いいんですか?」

 どーぞどーぞ、と二人の声が重なる。

 お誘いに応じた私は新たにお酒をオーダーし……

先ほどまでの合コンとは打って変わって、楽しい会話に興じる。
………

………
 乾杯の後で、私はユリ、二人は伊原いはら篠崎しのざきと名乗った。

 後輩に「性格悪そうな顔」発言をしたのが伊原さんで、ちょっとやんちゃそうな雰囲気。

篠崎さんはクールな印象だ。

全員アラサーだったこともあり、さっきの合コンみたいな学生のノリよりよっぽど気が楽。

 盛り上がる訳じゃないけれど、まるで旧知の仲であるかのように弾む会話は楽しくてお酒が進み……

途中、篠崎さんは奥さんから電話がかかってきたそうで退席した。

 伊原さんはタイミングを見計らっていたかのように耳打ちする。

「ぶっちゃけ、本当はユリちゃんって彼氏いたことあるよね?」

「どうしてそう思うの?」

「男との会話に全然物怖じしないし、むしろ話も合いの手もうまいんだもん。

これはモテるよなぁって」

 伊原さんはしげしげと私を見つめ、続けた。

「外したら失礼だけど、キャバ嬢、とか?」

 少し驚いた一方で、なんだか嬉しくなる。

私は察しのいい、頭の回転が速い人が好きなのだ。

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