「吹雪。」
祖母に話しかけられた。
祖父母の自宅にはカチカチな心構えの吹雪に、救いの手を出したのだ。
「あ、え、なぁに?」
「買い物をお願いしようかなと思ってね」
「いいよ!」
「地図は描いたんだ。近いしわかりやすいから安心して」
地図と買い物袋と財布を預かる。
「母さん。吹雪は方向音痴だから、俺が行くよ」
「いいんだよ。アンタには違う力仕事が待ってんだからね」
「げ」
「大丈夫だよお父さん!いってきまーす!!」
吹雪はミッションを与えられて、ウキウキと父の実家から飛び出した。
歩くこと10分。
意外とかかるな、と考えながら歩いていた。
そしてようやくたどり着いた店に入ると、
そこにはオレンジ頭のキラキラした男性が不機嫌そうにレジの順番を待っている。
頼まれた買い物を済ませると、今度はその男性は店の端でしゃがんでいた。
吹雪は体調が悪いのかと慌てて声をかける。
「あのっ!」
「‥‥‥」
呼びかけるも反応がない。
もう一度呼びかけて肩を叩くと、男性は振り返った。
その顔は、真っ赤で汗をかいていた。
「大丈夫ですか?」
「話しかけんな」
「(むっ)わかりました。見て見ぬ振りします。」
少しむかついた吹雪は、その男性の前に立つ。
そこでポロっとふいに白いハンカチが落ちた。
「おい」
「あれー?なんかハンカチがないな」
「落としたぞ」
「まぁいっか。どうせ汗ふく用のハンカチだし」
「‥‥‥おい女」
「へ?」
まさか呼び止められると思わなかったので驚いて男性を見た。
ぜぇはぁぜぇはぁしている。
「あの、ほんとに大丈夫で―‥‥‥」
「俺を助けろ」
「え???」