不倫・禁断の恋

二人っきりの混浴情事

旅先の旅館で働く一人の男

私は路上チューカップルを後にすると、6年ぶりに思い出の旅館に着いた。

女将さんがが笑顔で迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。西野紗月様ですね。お待ちしておりました」

フロントでチェックインを済ませると、女性の仲居さんが部屋へ案内してくれた。

2階への階段を上げる前に、一人の男性がフロントの横にある売店に入っていくのを見かけたのです。

よく見ると、さっき路上チューをしていたキス魔カップルの男の方でした。

あのキス魔カップルもここに泊まっているのか、その時はそう思っていました。

部屋に入って荷物を置いて、仲居さんから旅館内の説明を聞き、しばらくお茶を飲んで寛いだ後、浴衣に着替えて夕飯まで下の売店に行ってみることに。

少し民宿っぽさもあるここの旅館には、結構大きな売店があり、前回もそこでお土産をたくさん買って帰った記憶がある。

1階に下りて売店にやって来ると、奥の方で商品の陳列をしている仲居さんがいた。

どうやら、女性ではなく男性の仲居さんのようだな。

男性の仲居さんなんてあまり見かけないから、珍しいなあと思ってチラチラ見ていると、なんとその仲居さんは、路上チューの男だったのです。

「あれ?お客さんじゃなくて、ここの仲居さんだったんだ・・・」

そして、レジには女性の仲居さんがいましたが、その女性はキス魔カップルの女性の方だったのです。

「ああ、なるほど、職場恋愛ってやつだな」

何が売ってあるか一回り店内を見て確認すると、夕食の10分前になったので、早足で2階の部屋に戻りました。

部屋に戻ってからしばらくすると、

「失礼いたします」

という声とともに、部屋の襖が開き、仲居さんが夕食を運んできてくれました。

すると、さっき案内してくれた女性の仲居さんではなく、あのキス魔カップルの男性がやってきたのです。

つい1時間ほど前まで、路上で何の恥じらいもなく、情熱的な激しいキスをしていたばかりのあのライオンの目つきの肉食系男子だ。

さっきの路上でのキス中に、目が合ってしまっただけに、メチャクチャ気まずい。

カチャン、カチャンと料理が盛られたお皿を運んで並べる音だけが、静かな部屋の中に響いている。

この重くて気まずい空気に耐えきれなくなった私は、

「あ、あのぉ・・・」

と遠慮がちな声量で思わず、その仲居の男に声を掛けたのです。

「えっ、あ、はい、何でしょう?」

と少しだけビックリした感じで、私に応対してくれました。

「・・・そのー、あのー、さっき道で、その・・・なんだ」

私は恥ずかしくて上手く聞き出せないでいると、

「あぁ、さっきのアレね。あっ!その時目が合った方ですね」

「えぇ、そうです。何というか、ジロジロ見ちゃって、すみませんでした」

と私が申し訳無さそうに謝ると、

「いえいえ、そんな、何もお客さんが謝ることではないですよ。あんな公共の場所であんなはしたないことをしていたこちらが悪いんですから」

と言いながら、ニコッと笑顔を見せてくれた。

さっきの激しく唇を貪るようなキスを鋭いライオンのような目つきでしていたあの時の男はどこへやら。

「仲居さん、お名前は?」

「松原と申します。どうぞご贔屓に」

なんだ、とても良い人じゃないか。

私はホッと胸を撫で下ろし、並べられた豪華な料理を味わった。

毛蟹のバター鍋、セイコ蟹の赤い内子、松葉ガニの刺し身、タラバ蟹の酒蒸し、ズワイ蟹のグラタンなど、蟹三昧の料理に箸が止まらない。

昆布だしに潜らせ蟹味噌をつけて食べたり、蟹にかぼすを絞ってかけて食べると、爽やかな香りと酸味が蟹の甘みをより引き立てる。

さらに、蟹以外にも、天然トラフグの唐揚げ、トラフグ白子の土鍋ごはんも最高で、仕事や失恋で負った心の疲れが一気に吹っ飛びそうだった。

久しぶりにの豪華な料理にお腹も心も満たされ大満足だった私は、露天風呂に入ろうと思って、松原さんに尋ねてみたところ、

「普通に露天風呂に入るのもいいんですけど、ここの旅館には混浴があるんですよ」

「えっ、こ、混浴ですか?」

「ええ、そうですよ。あっ、でもいつでもやっているわけではなくて、深夜12時になると、そこから2時間だけ混浴になるんです」

「へぇ・・・、でも、利用する人っているんですか?」

「まあ、あまりいないかな。特に今日は平日だからお客さんも少ないからね。あっ!でも、ここだけの話、僕も仕事終わりにたまぁーに利用しちゃうんですよ」

「あら嫌だ。ひょっとして、女性目当てで利用しちゃってたりするとか?」

「あはは、まあちょっとは期待しちゃってるかも。だた、時間帯が遅いせいか、今まで一度も誰とも入ったことはありませんけどね。いつも一人寂しく入っています」

「通常の露天風呂は、夜何時まで利用できるんでしたか?」

「夜の10時までですね」

入浴できる時間を聞いたので、少し休憩したら入ってこようかなと思った。

「フロントに電話していただければ、後でお布団を敷いておきますので。それでは、どうぞごゆっくり」

食事の片付けを済ませた松原さんは、部屋を後にした。

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