「……原稿、おつかれさまです」
にっこにっこと笑う綾部先生を前にし、一応は労う。
「いやー最速だったかもねぇ。で、本題だけど……」
「ちょ、ちょっと待ってください!原稿!原稿見せてください!先生を信用していないわけじゃないですけど、一応!」
「あぁ、そりゃそうだよね。はい」
ざっと目を通すかぎり、手を抜かれたところも、本編と矛盾する要素も確認できない。
それどころか、十二分に読み応えのある内容だった。
「……綾部先生はやっぱりすごいですね」
サボり癖のある、だらしないダメっぷりを見せつけられても、期待したことを全部やりこなしてしまうスタイルはもはやずるい。
反則的に、かっこいい。
「へへー。惚れ直してくれた?」
褒めて?とすり寄ってくる姿はまさに犬で
「はいはい……よく頑張りましたね」
その頭を撫でて、少し迷って、ハグをしてあげた。
ぽんぽん、と背中をあやすように撫でると「……まじか」と固まっている。
「……ハグ、してほしかったんじゃないんですか?」
あわてて身を引こうとすると、逃がさないとばかりに腰に手を回される。
「してほしかった!間違いないです!はぁー花ちゃんマジでかわいい!充電させて!」
「ちょっ……調子に乗らないでください?」
がばっと抱き着いてきた先生は、ハグを通り越して私を押し倒す。
体重をかけすぎないよう考慮してくれているのはよくわかるけれど、互いの鼓動がわかるほどくっつくのは、もはやスキンシップではない。
それに
「……あの、先生、あ、当たってます……」
生地のやわらかいスウェットでは、下半身の昂ぶりを抑えることはできないようで、その感触がしっかりと私の太ももに伝わる。
「花ちゃんさ、明後日まで俺の言うこと聞いてくれるって、どこまで許してくれるの?」
耳元の
色気をたっぷりと含んだそれに、私は思わずたじろいでしまう。
「あ……その……」
いつものふざけた様子もなければ、一人称も違う。
目の前の、私を押し倒す綾部先生は、まったく別の男性に見えた。
「ちゃんとはっきり言わないと、俺が一番したいこと、しちゃうよ?」
そう言うと、先生は私のシャツの裾から手をするりと滑りこませる。
ブラの上から優しく胸をつつまれると、思わずきゅんとした。
心の奥では、「性的なことはダメ」とか「本番まではしない」とか、言わなきゃいけないってわかっていた。
でも
「一番したいことって、なんですか……?」
――主導権を握らせるようなことを、無意識に口にしている時点で、私はそれを待っていたんだ。
「明後日まで、花ちゃんとずっとえっちしたい。花ちゃんがどんなにダメっていっても、ずっとかわいがってあげたい、かな」
体を放して、上半身の衣服を取り払った綾部先生はにぃっとニヒルに笑う。
悪い顔をした男に組み敷かれている状況下で、余裕なんかあるわけない。
返事のかわりに、私はシャツのボタンを自分で外した。
「……ご褒美ですから」
恥ずかしすぎて顔をそらしたけど、先生は私の顎をとり、正面をぐいっと向かせた。