フリーズしてしまう。
「あ、わり、気まずくなるから忘れろ!あー、恥ずかしい」
「わたし‥‥も、昴くんが好きだったよ。けど彼女いたし、地元離れるからダメかなって‥‥‥」
「まじかよ!っつか、その荷物、もしかして家出か?」
「旦那から逃げちゃった。今までは我慢できたけど、なんでかな。はー、あはは。意味わからないよね」
わたしどんな顔で昴くんと話せてるのかな。
空回り、って言われるかな。
昴くんって周りに気遣う人間だったから、すぐにバレそう。
………
………
「わかるよ。‥‥‥つらかったんだな」
「!」
「苦しくて疲れて‥‥‥つらいんだろ」
思わず涙があふれ出す。
だって、だって、わたし自身ですらわからなかった“つらい”と“苦しい”を当ててしまわれたから。
止まらない。わたし、いい年してどんだけ泣いてんだ。
あーあ、みっともないなぁ。
そんな風に笑っていれば、昴くんはわたしを抱きしめてくれた。
「いいよ。なんでも言えよ。ほら、俺今は部外者だから」
「‥‥‥っ‥‥‥うぅっ、ぅ」
子どもの時みたいに泣いてしまった。
そうなんだよ。子どもがいるから強い母親でいなければならない。
浮気されようが、帰ってこないだろうが、いつだって母親のわたしは気を張って。
子どもだけは何としてでも守りたくって。
その感情がポカンとなくなってしまって、強気なわたしに戻れない。
思い切り泣いていれば、大雨にさらされた。
「やば、美鈴ちゃん、走れるか!?」
「もちろん!」
「雨宿りしよう!!」
‥‥‥
‥‥‥
「いや、ほんと、ごめんな美鈴ちゃん」
なぜ彼が謝っているのかと言うと、わたしたちが入ったのはラブホテルだったからだ。
「大丈夫だからね。」
「すまん‥‥‥」
「あははっ。なになに、別にもう大人なんだし、いいじゃんラブホでも」
「‥‥‥」
わたしは濡れた上着を脱ぐ。
「昴くん、上着ちょうだい。部屋が暖かいから乾いてくれるかも‥‥‥昴くん??」
何も反応がない昴くんを不思議に思って、わたしは昴くんを見た。
そこには両手で顔を隠している昴くんがいる。
不思議でならない。なにか恥ずかしいのかなぁ。
「昴くん?どうしたの?」
「‥‥‥わりぃ」
「え?」