マニアック

主婦の献身

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 宿泊当日。

「主婦のくせに旅行だなんて」「その間、飯は?」「パートの稼ぎでいいご身分だよな」

 等々。

 嫌味やフキハラに苛まれた私たちだったけれど、

旅館の玄関口で「ここからは家族と仕事の話禁止で」と固く約束し、指輪を外した。

 フロントでは里香が対応してくれて、私と幸穂は後をついていく。

 高級旅館を思わせる館内から奥へ進むとホテルのような内装へ変わる。

 どうやらそれが、普通のお客様との境界らしい。

 ちなみに乱交を目的に全員同じ部屋、というプランが人気だそうだ。

さすがにハードすぎるので今回は見送った。

シングルを一人一部屋抑えていて……相手役は三人まで選べる。

 

「とりあえずは向こうのおすすめの人と喫茶室でおしゃべりするのが一般的かな。
それか部屋で待機して、マッサージしてもらうとか。いきなり大浴場でイチャイチャするのも人気みたい」

「てことは混浴?」

「もちろん。普通の宿泊客とは違う浴場があるの」

 ここから先は単独行動なのだと改めて実感し……いよいよ普通の旅行じゃないことに緊張を覚えた。

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