マニアック

主婦の献身

 私と里香は部屋での待ち合わせを希望。

幸穂はなんといきなりお風呂にするらしい。

 二人と別れた私は、予約した部屋に入る。

「わ……思ったより広い……」

 アジアンリゾートっぽい内装は高級旅館とはイメージがかけ離れているけど、異国のスパみたいでいい感じ。

 

 私は里香に教った通り、備え付けの端末で男性を選び、部屋に来てもらうようコールした。

 緊張が落ち着くまもなく、「失礼します」と声がかかる。

 指名したセラピストは私よりも年上の、体格の良い男性。

「ご指名ありがとうございます。月島つきしまです。どうぞよろしく」

 旦那の突き出たお腹とは対照的に、引き締った逞しい肉体を拝みたくて彼、月島さんにしたけれど、ルックスは抜群。

 こんなカッコいい人と……と息を呑む。

心臓が鳴り止まないまま、私はマッサージをお願いした。

(まずはおしゃべりをする人も多いみたいだけど……緊張しちゃって無理だもん……)

 その点、マッサージを受けながらなら共通の話題も作りやすいだろうし。
………

………
「マッサージを始める前に……沙奈さん、緊張されてます?」

 ベットサイドに並んで腰をかけると、私の腰の倍はある月島さんとの体格差を見せつけられる。

 ボクサーというよりはレスラーっぽい体格で、ワイルドな肉体美に優しそうな顔がミスマッチで、それがまた好感度を上げてくる。

「は、はい……! こういうの初めてで……」

「なるほど。でも、安心してくださいね。僕はあなたが嫌がることは一切しないとお約束します」

 月島さんは私の手を握って微笑んでくれる。

(な、なにこれ……! アイドルの握手会ってこういう気分なの?!)

 これから起こりうることへの期待値とともに、想像以上のイケメンぶりに眩暈めまいがした。

 私は月島さんに言われるがままベットにうつ伏せになる。

 いきなり全裸は恥ずかしいので、まずはバスローブ姿でマッサージ。

 月島さんの大きな掌はじんわりと温かくて、ただ押されているだけで気持ちいい。

「マッサージなんて久しぶり……すごい気持ちいいです」

 首のあたりをゴリゴリと刺激され、リンパを流すため、と摩られる。

痛いところはゆっくり優しく、だんだんと力を込めてほぐされる……思わず声が出るほど気持ちがいい。

 難しいことはよくわからないけど、月島さん、マッサージ師としてもかなり優秀なのでは?

「肩、かなり凝ってますね。腰と、あとお尻も」

「ですよねぇ……マッサージなんていつぶりだろー……もう身体のメンテナンス、どこもできていなくて……」

「身体があちこち痛むのは日々頑張っている証拠ですよ。だから今日、全部癒しちゃいましょうね」

「ふふっ! はい……」

 ぐーっと肩甲骨を剥がすように腕を伸ばし、痛いところを絶妙に親指が滑る。

「あぁっ……! 効くぅ……」

 絶妙な力加減で筋肉が伸ばされ、痛む箇所をもみほぐされて……

「身体の力が抜けてきましたね。そろそろ素肌を直接オイルマッサージしてもいいですか?」

「はい、お願いします」

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