小さい時から、私は異性に興味がなかった。
私が声を恋愛対象としていることに気がついたのは、何がきっかけだったかは忘れた。
気がついた時には、私は声に恋するようになっていたのだ。
たくさんの良い声が聞けるアニメやゲームは、私を満足させてくれる大切な存在だ。
でもこんなこと、人には話せなかった。
絶対変人扱いされると思って、恋愛に興味がないふりをしていた。
「アセクシャルか?」と聞かれることもあるが、聞かれた時はあえて否定をしていない。
リエは私のそんな性愛を知っている唯一の人だ。
リエとは高校2年の時に同じクラスになった。
ウマが合って、2人でよくアニメや漫画の話しをしていた。
リエは私が声優に詳しいことから、良かったら一緒に声優イベントに行かないかと誘ってくれた。
私が断ると、リエは「顔出しとかは興味ないタイプ?」と尋ねてきた。
私は迷ったが、リエには話しても大丈夫な気がして、私の性愛について正直に話した。
当然リエは呆気にとられた顔をしていたが、「ああ、そういうのもあるんだねえ」と言った。
リエは決して私をバカにしなかった。
リエのモットーは「十人十色」で、1人1人が自分の考えや趣味を持つことを理解している。
だから、人の心に土足で踏み入るようなことはしない。
リエは私の性愛を完全に理解できないまでも、そういう感情を持つ人がいるということは分かってくれている。
「リエ、今日は時間ある?よかったら、晩ご飯を一緒に食べに行かない?」
「ごめん。今日こそ、彼を落とすんだ。帰ったら速攻でプレイしたい」
「早いね。あのキャラ、落とすの難しくない?私、まだ落とせてないよ」
「あのキャラが目的であのゲーム買ったからさ、ネットでフライングした」
「なるほど」