真夜中に突然ドアを叩く音がして・・・
不二子ちゃんの実家に遊びに来て4日後の夜は、台風の影響もあってか、結構外の風雨が強かった。
時間は夜の11時を回った頃だっただろうか、突然ドアをダンダンと叩く大きな音が聞こえました。
玄関に行ってドアの覗き窓で外を確認すると、あの20歳の若い海士さんがドアの前に立っていたのです。
私が急いでドアを開けると、彼は、
「お願いです、明かりを消してくれませんか」
と慌てた様子で言ったので、私も慌てて電気を消し、カーテンも閉めて身を潜めた。
外からは女性らしき人の怒鳴り声が聞こえていました。
これは何かただ事ではないかもと思った。
しばらくすると、その女性の声はしなくなり、静寂を取り戻した。
明かりをつけると、彼は頭から足の先の方まで全身水浸しのようなずぶ濡れ状態になり、雨で冷えた体と恐怖でブルブルと体を震わせていたのです。
そんな彼を見て私は風呂に入って体を温めるように勧めた。
私は別に2着パジャマを持ってきていたので、女性用で男性には小さいと思ったけど、男性用のパジャマなんて持っていなかったので、私の別のパジャマを貸してあげた。
思った通り袖と裾が短いけどそれは仕方がない。
それにしても、雨風も強い中こんな夜遅くに何があったんだろう。
「一体どうしたの?」
そう彼に聞いても無言のままで、私の膝にしがみつき突然泣き出したのです。
最初に出会った時から、彼に好意を持ってしまっていた私は、彼を抱き寄せてキスしようとすると、
「ダメだよ、今日はダメだよ」
そう言って、彼は私を軽く突き放しました。
はっ、私としたことが・・・、何てことしたんだと急に恥ずかしくなり、狼狽えて動揺している私に向かって、
「今夜、悪いけど何も言わないでここに泊めてくれませんか?」
と彼は懇願してきたのです。
突然のことに驚いたが、何か事情があるに違いないと思い、一晩だけなら泊っていいと承諾しました。
まだ動揺していた私は、それを誤魔化そうと台所に行ってコンビニで買ってきていたハイボールを持ってきて、コップに注いだハイボールを一気に飲み干すことに。
しばらく続いた室内の静けさに気まずさを感じて、
「えっと・・・あっ、確かお名前はケンタ君だったよね、ケンタ君も一緒にどう?」
そう言って、彼にコップを差し出したが、彼は何も返答をしませんでした。
私は続けてハイボールを2杯、3杯と飲んで、気持ちを落ち着かせようとしたが、飲みすぎて酔いが回り、いつの間にか眠ってしまったのです。
ふと目が覚めると、嵐は収まり外は静まり返っていた。
しかし、ケンタ君はすでに帰った後で、そこにはもういなかった。
「美由紀さんへ。今夜は急なお願いを聞いていただき、泊めてくれてありがとうございました。また明日にでもお礼に伺います」
と書かれた置手紙がテーブルの上に残されていた。
翌日の夜、ケンタ君が昨日のお礼にやって来ました。
漁で獲れた新鮮なサザエやアワビなどの貝類に、ビールなどのお酒も持参してくれて、昨日貸してあげたパジャマもキレイに洗濯して返してくれたのです。
そして、昨日はお酒を飲んでくれなかったケンタ君も一緒に飲み、お酒の勢いもあって、段々話は盛り上がっていきました。
さらに、お酒が入って酔いが回ってきたのか、彼は私に隠していたことを打ち明けてくれたのです。