このマンションに引っ越してきて一ヶ月。
私は一人暮らしを満喫していた。
このご時世のため最近は自宅で過ごす時間が増え、通販に頼る機会も多い。
だから必然的に、宅配便の配達員と顔を合わせることが多くなった。
「どーしよ……!緊張してきたっ」
私は玄関の前でうろうろしながら、チャイムが鳴るのを待った。
実はかっこいいなと思っていた宅配員のお兄さんに、昨日告白されたのだ。
明日から担当地域が変わってしまうので、迷惑かもしれませんが気持ちを伝えたくて!
と緊張しきった面持ちで好意を伝えてくれた。
今日は通販で買った洋服を配達してもらうことになっていて、その際にお返事する約束をしている。
もちろん答えはイエスだ。
――ピンポーン。
「き、きたっ!」
待ちかねていたチャイムの音である。
私は一度深呼吸をしてから、そっとドアを開けた。
「はい……」
「お届け物……です」
宅配員の彼は顔を真っ赤にして、私を見つめた。
告白の返事をここでするのは近所の目が気になる。
玄関に入るよう促すと、彼は黙って私の後についてドアを潜った。
「あの、これ、荷物っす」
「……ありがとうございます」
彼が差し出すドぎついピンクの小箱に腕を伸ばす。
私が買った洋服のブランドは、もっとシックな箱で送ってくるイメージがあったが、路線を変えたのだろうか。
「へ、返事、もらえますか」
「……っ!」
ドキッとして思わず手が滑る。
受け取りそこねた小箱が玄関の床に落下し、その拍子に封が破れて中身が飛び散った。
「あっ!すみません!」
「いえ、私こそ!」
二人同時にしゃがんで、落ちたものに手を伸ばし……しばし、固まる。
沈黙があたりを支配した。
散らばったのは、どれも買った覚えのないものばかりだ。