一時退院に向けて彼の頭の中はエッチなことばかり
こんな状況でも恋人の性欲処理を疑ってしまう私もどうかと思うけど・・・。
でも、許すと覚悟したとはいえ、完全に不安が拭いされたかと言われれば、それは完全に
は無理なことで、仕方のないこと。
そして、入院する当日にも病院に駆けつけてくれた両親と勝秀君に見送られながら、私は
そのまま人生初の入院生活に突入したのです。
しかも、無菌病棟での治療となりました。
無菌の2人部屋は入り口側にトイレ、洗面所があり、2台のベッドの前には、やっと通れ
るくらいのスペースしかなく、かなり狭かった。
ベッドの上には、アイソレーターという空気清浄装置、サイドには、ビニールのカーテン
が下がっていて、無菌状態に保ってある。
そして、最初の治療が始まった。
血液の病気の治療というと副作用が酷く、すごく過酷なイメージがあるが、医学の進歩の
おかげで、私は軽い副作用で済み、入院生活もマイペースで過ごせました。
「もしもし~、勝秀君。今は血液の数値が低いけど、そのうち回復してくれば、一時退院
になるからね」
毎日の勝秀君との電話で、私は経過を伝えた。
「1ヶ月長かったね、やっと会えるのか~」
電話口から勝秀君の嬉しそうな声が聞こえてくる。
「ねぇ、亜香梨ちゃん。一時退院の時にエッチしていいのか、先生に確認しておいてね」
「えっ!先生にそんなこと聞くの?」
「聞きづらいと思うけどさ・・・、頼むよ」
聞いておいてと言われても・・・、そんな確認をする患者って、いるんだろうか?
すでにもう、彼の頭の中は、一時退院に向けてエッチなことばかりでいっぱいのようだ。
まあ裏を返せば、そんなことを懇願するくらいだから、おそらく、私と会っていなかった
間に、風俗遊びはしていなかったんだということが想像できます。
私はちょうどその頃から、血液の数値の回復に伴う『回復熱』で高熱が出ていました。
だけど、ステロイドの注射で一気に熱が下がったので、一時退院中も予防のために、ステ
ロイドの服用薬が処方されることになったのです。
「ステロイド剤は免疫抑制の作用がありますので、感染症には注意してください」
回診の時、主治医がそう注意しました。
「先生、あのぅ・・・、パートナーとのスキンシップというか、そのぉ・・・、接触は
平気でしょうか?」
私はしどろもどろに尋ねた。
「あっ・・・、そうですねぇ・・・」
主治医は少し考えながら、言葉を選ぶようにして説明してくれた。
「ステロイド剤を服用している間は免疫力が下がるので、刺激により傷ついてしまうと、
そこから菌感染してしまうことがあるので・・・、今回はパスしていただきたいですね」
「はあ・・・、そうですか・・・」
私があまりに落胆した表情をしていたからか、主治医は一旦出ていったものの、再び戻っ
てくると、コピーしてきた用紙を私に渡した。
「ここに詳しく書いてありますから」
そこには治療に伴う『性生活について』の説明が載っていました。
要約すると、『ステロイド内服時は性交渉を控えること。性行為は特定のパートナーと
だけ、必ずコンドーム着用、口や肛門を使った行為は厳禁』とのこと。
「今は感染症にかかると大変なので注意してくださいね」
主治医が念を押したのです。
入院生活1ヶ月後、一時退院した私は勝秀君と隣町のラブホに向かっていた。