「クラブ行くとその場のテンションでハメ外しちゃうんだよねぇ」
双子の妹であるサキが、舌を出しながらへらへらと笑った。
「その場の雰囲気に流されるとか、
自分の芯がしっかりしてない証拠でしょう。バカみたい」
それを
サキにはもともとお調子者のきらいがあったが、
最近新しくできた変な名前の……
そう、確かTinctureとかいうクラブに出入りするようになってから、
その傾向は
「サキみたいに身持ちが軽い女って最低だと思うんだけど。
ワンナイトラブとか、彼氏を取っ替え引っ替えとか、
自分を安売りして何が楽しいの?」
「はいはい、ミキはお固いんだから。
って言ってもさぁ、私もそこまで頭と体もユルユルじゃないはずなんだけど。
あのクラブに行くと妙に楽しくなっちゃうんだよねぇ。
ミキも行ってみなよ。そしたら私の気持ちわかるって」
「分かりたくないわよ。そもそもクラブとか興味ないし。
でも、例えそのクラブに行ったとしても、私はハメを外したりしないわ」
「それは行ってみなきゃ分かんないじゃん。
これ、今夜のイベントの招待チケット。
あたしは昨日行ってきたから今日はパスするし、もったいないから覗いてきてよ。
それでミキの言葉を証明してくれたら、あたしも色々考え直すかもね?」
「ちょっと、サキ!」
押し付けられたチケットを返す間もなく、
サキは
「興味ないけど……サキがいつも行ってるクラブがどんな雰囲気か確かめたいし、
反省のきっかけになるなら……まぁ、覗いてみるか」
私は後ろ頭をかきつつ、仕方なしに服を着替えに向かった。
「あ!そういえばTinctureに行くと記憶飛んだり、
気づくと寝てることとかあるから、念のためズボンで行ったほうがいいよ」
自室に入ろうとしたところで、隣部屋からひょこりと顔をだしたサキが、
とても有用なアドバイスをしていますという顔で声をかけてきた。
「あのねぇ、私はあんたみたいに大酒かっくらったりしないから」
呆れつつ返事をすると
サキはへへへと笑って顔を引っ込めた。
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