マニアック

愚かな姉 

私はリンちゃんと婚約者さんの了解を得て、三女に連絡。

三女に来てもらい、事の次第を話した。

三女は少し考えてから、

「いい案があるから、任せて」

と言った。

それから半月後、姉は自分より20も年上の男と結婚して

絶望的な表情のまま男の故郷へと旅立った。

両親だけでなく、私や妹達にまで

「行きたくない」

と泣きついてきた。

でも誰も、両親ですら姉を助けなかった。

誰もかれもが姉に愛想をつかせていたし、

リンちゃんの婚約者さんに対してしたことを知っていた。

両親としては親戚づきあいにヒビが入る前に

トラブルメーカーに消えてほしかったんだろう。

リンちゃん達は姉がいなくなって1年後に結婚した。

結婚式に姉は呼ばれなかった。

リンちゃん達が結婚してから数年後、

両親は家を売却してマンションに移ることにした。

その準備のために部屋の掃除をしていた時のこと、

今は使われていない四女の部屋から1枚のDVDディスクが見つかった。

何のラベルもなかったけど、私にはすぐ中身が分かった。

昔の私の部屋に戻り、DVDプレーヤーで再生してみた。

昔のリンちゃんのアパートの一室、

ベッドのある部屋で姉はそわそわしていた。

ベッドから立ったり座ったり、

大した髪でもないのに女優のように手でふわっとさせたり。

そうしているうちに、部屋のドアがノックされた。

姉はいそいそとドアを開ける。

「こんにちは」

と、男のくぐもった声がした。

男はマスクと眼鏡をしている。

「風邪をひいてしまって、こんな声で…」

と、男はわざとらしい咳の音を立てる。

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