恋のはじまり

私のすべてを見てほしいの

「じゃあ、そこの椅子に座ってください」

きっと彼は、いつも部活でやっているみたいに、制服を着たままでモデルをするんだと思っているだろうな。

でも、私は昨日、心に決めてきたのだ。

今日、私の全部を見てもらう、と。そして、それを彼に描いてもらうのだ、と。

「結城さ、私がこのままでモデルをするんだと思ってるでしょ」

「は、はい。え、そうじゃないんですか」

「私がさっき、なんて言ったか覚えてる?」

「え、えと……」

私がそう聞くと、彼はさっと顔を赤らめた。

きっと、私がなんて告白したのかを思い出そうとしているのだろう。

その表情を見られたのは嬉しいけれど、私が聞きたいのはそういうことじゃない。

「違う違う、私がなんて告白したかじゃなくて、そのあと」

「えと……、私を見てほしいっていう言葉ですか」

「そう」

そう。私は今日、彼に私を見てもらいたくて、ここへ来た。

「その意味、分かる?」

「え、あ、いや……」

戸惑う彼。わざと私がぼかした言い方をしたから、すんなりと伝わらないのも無理はないと思う。

けれど、そんな風に戸惑ってしまう彼を見て、私は胸が少し、苦しくなった。

「こういうことだよ」

彼が何かを言う前に、私は答えを出した。

私は自分でセーラー服のリボンをほどいた。

「ちょ、先輩、何やってるんですか!?」

「私を見てって、言ったじゃん」

私はそう言いながら、上半身を覆っていたセーラー服をすべて脱いでしまった。

「せ、先輩?」

「むこう向いてて」

「え……」

「だから、むこう向いてて」

私は彼の肩をつかんで、強引に背中を向けさせた。

私はスカートも脱ぐ。もう制服は着ていない。

「ま、まさか脱いでます?」

「うん、脱いでるよ」

靴下を片方ずつ脱ぐ。もう足は何も身に着けていない。

「な、なんで脱ぐんですか」

「だから言ったでしょ、私を見てって。それから、私を描いてって」

ショーツを脱ぐ。毛はほとんど剃っていない。嫌だと思われないだろうか。

「まさか、ヌードデッサンをしてほしい、っていうことだったんですか」

「うん。そう」

キャミソールを脱ぐ。もう身に着けているのは、ブラだけだ。

「でも僕」

「大丈夫、私も初めてだから」

ブラのホックを外し、それも脱ぐ。

私は生まれたままの姿で、彼のすぐ後ろに、立っていた。

「こっち、向いていいよ」

「は、い……」

彼が息をのむ音が聞こえた。

そして、彼はこちらを振り向いた。

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