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自宅のリビングで、乾いた音がひどく響いた。
「おいこら!!いつの間に華を‥‥‥勝手に!!」
また、か。またぶたれた。
だけどもそれは想定内。
「‥‥‥あの子にも幸せになってほしいんです」
「そうだろうなぁ!けど俺にも言えよ!!」
「ごめんなさい」
わたしの左手首をつかんだまま、持ち上げられた。
痛みが走って声を出してしまう。
そしてそのまま寝室に行き、ベッドにダイブさせられた。
いとも簡単に服を引き裂かれる。
このままはいやだな‥‥わたしは意を決することにした。
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「このままは嫌です。もう、疲れました。愛なんて‥‥‥あなたからみられることがなくなりました。別れてください」
ようやく言えた。
わたしは子どもたちがこの家から嫁いだ時に言おうと決めていたセリフ。
「なんだと‥‥‥黙れ!!反論するな!!」
「どうしてですか?!わたしはあなたのおもちゃでもありません!!!」
「なら離婚だ!!」
「当然です。」
「‥‥‥出ていけ‥‥‥」
「1日ください。それまでには準備を―‥‥‥」
「今すぐだ!!!!」
激高している旦那に他の話を聞くことができないんだろうな、と察する。
とりあえずわたしはある程度の荷物を持って着替えてから家を後にした。
だけれども行く場所もないし、雨だって降ってきた。
「最悪‥‥‥」
「あれ?
「え?」
久しぶりに名前を呼ばれた。
「あ、もしかして俺忘れられてる!?」
「えっと‥‥‥」
「やっぱりな。俺、
」
「‥‥‥!昴くん!!??
「正解ー!」
そう、わたしが高校の時、3年間片想いしていた男性だ!!
まさか覚えててくれてただなんて‥‥
「昴くん、わたしもうすっかり年老いてるのに良く気づいたね」
あのころとは違う。
肌だって、体形だって、髪型だって‥‥‥なんで‥‥‥?
「そりゃぁな。俺ずっと美鈴ちゃんが好きだったから。なんて」