「そ、そんなに見ないでください」
「見ないと絵、描けないじゃん」
「そ、そうですけど……」
彼の体は、とてもしなやかだった。
色白だけれど、不健康な感じはあまりしない。
「結城って、なんか運動してる?」
「じ、自転車が趣味なので」
「そういうことか」
確かに、下半身は少ししっかりしていた。
その時、彼のペニスが大きく膨れ上がっているのが、目に入ってしまった。
「どうしたの、もしかして、見られて興奮しちゃってる?」
「し、仕方ないでしょ、女の人に見られたのなんて、初めてなんで……」
「ふふ、かわいい」
私は、彼のイーゼルに自分のスケッチブックを立てかけて、彼の絵を描き始めた。
全体の輪郭をふんわりと描き上げたが、どうしても彼の性欲の塊の主張が強くなってしまって、うまく描けなかった。
「うーん……」
「ど、どうしたんですか?」
「いや、それがおっきくなってて書きにくいなって」
「それって……、あ……」
彼は自分のペニスを見て、恥ずかしそうにうつむいてしまった。
「じゃあ、私が小さくしてあげる」
「え?」
彼は不思議そうな顔をしていた。
私は立ち上がって、彼に近づいた。
「こうすれば、小さくなる?」
「あ、ちょ……」
私は、彼のペニスに手を当てて、ゆっくりとこすった。
彼のそれは、程よい太さと長さで、ちょうど私の手に収まった。
「ん、や、やめて……」
「気持ちよさそう」
彼の腰がびくびくと動くのを感じた。
私はわざと、彼の体に自分の乳房を押し当てた。
そこから、じんわりと彼の体温が伝わってきた。そして、彼の薄い胸板から、鼓動も私に伝わってきた。
「ドキドキしてる?」
「そ、そりゃ、しますよ……」
彼の頬は、赤く染まっていた。そんな風に彼が照れているのが可愛くて、私は少しだけ背伸びして彼の口にキスをした。
「せ、先輩……」
「これ、私のファーストキスだから」
「ぼ、僕もです……」
彼の心情に反応しているのか、私の手の中で彼のペニスがびくびくと震えていた。
私は、それをこする手を少し早くした。徐々に彼のペニスが、濡れてくるのを感じた。
そして、私も徐々に濡れてきているのを感じてきた。
「結城」
「はい」
「私のも、触ってよ」
私は、ペニスを握っていない方の手で、彼の手をつかんで、無理やり自分のまたぐらに突っ込んだ。
「ちょ、いきなり」
「触ったこと、ない?」
「ないですよ、キスも初めてなのに」
「それもそっか」
そうだ。今日の私たちは、初めてのことだらけだった。
ヌードモデルになることも、ヌードデッサンをすることも、キスをすることも、お互いの性器を愛撫しあうことも。
全部、私たちの、初めてなのだ。
「指を入れても、大丈夫ですか?」
「うん、入れて」
彼は私の耳元でそうささやいた。
私もそれに、小さな声で答えた。
彼は、私の股に咲く花びらのふちを、ゆっくりとなぞった。
それだけで、私はあまりの快感に絶頂しそうになった。
自分で何度か触ったこともあったが、それとは比べ物にならないくらいの快感だった。
誰かに触られている、というだけでこれほど違うものか、と私は少し驚いてしまったくらいだ。
そして、彼は湿った私の深奥へ指をすべり込ませてきた。
「んんっ……」
私は思わず声を上げてしまった。
「い、痛かったですか?」
「ううん、気持ちよくて……」
「よかったです」
彼は、安心したような顔でそう言った。
その表情には、彼のやさしさがあふれていた。
「もう一回キスして」
「言われなくてもします」
彼はいつもより少しだけ低い声でそう言って、私に口づけした。
彼の唇は少しかさついていたけれど、質感は柔らかくて、それだけで癖になりそうだった。
「結城、好きだよ」
「僕も、好きでした」
「うそ」
「ほんとです」
彼はなぜか、少し怒ったようにそう言った。
「気づいてないのに、僕に告白してくれたんですか」
「もしかしたらそうなんじゃないか、って思うこともあったけれど、私が都合よくそう思ってるだけかなって、思ってたから……」
「僕と同じじゃないですか」
「え?」
私たちは、互いに裸で抱き合ったまま、そうやって、小さく笑った。