「名前教えて下さい、お兄さん」
「大河だよ」
「……大河さん。大河さん、好きです」
お兄さん――改め、大河さんを見つめて、ちゅっと控えめなキスをする。
もちろん舌を入れる濃厚なやつを仕掛けるためのご挨拶だ。
「好いてくれるのは嬉しいけど、だいぶ積極的だよね。最近の子は皆そうなの?」
「他の女の話しですか?昼間の歌もう一回歌いましょうか」
「ええ、こわ……」
大河さんは口元を引き攣らせつつ、私にちゅっとお返しのキスをくれた。
「うれしい、もっとして」
「本当に素直だねぇ。お兄さん心配になってきた」
あ、と口を開いて強請ると、大河さんは歳上の男らしく大胆に舌を差し込んできた。
薄い舌が喉の奥側の、ざらついているところをザリザリと擦り上げる。
上顎をそうされるだけで、腰が抜けるような気持ちよさが全身を巡った。
熱く滑った他人の肉が、ぬるぬると己の急所を這いずり回ることを快感と捉えるのはきっと人間だけだろう。
あ……舌、絡められちゃう。
くちゅくちゅって、されちゃう……。
ふ、ふ、と鼻で息をしながら、涙目で彼の様子を伺う。
大河さんは私の反応を面白がるように、両の眼を細く弛ませた。
ぬりゅ、と彼の尖った舌の先が、私の舌の奥の方を舐める。
ぞくぞくっと甘い痺れが背中を走って、私は大河さんの首に回した腕に力をこめた。
舌は手前側のほうが敏感だ。
有害な物質が体内に入る前に、素早く感知できるよう進化したのだから当然である。
だから前の方も、舐めてほしいのに……。
「ぅん、ん、ンン……っ」
いやいや、と首を左右させて、唇を押し付けるようにして舌技をねだると、大河さんはふっと息だけで笑った。
「ここ?」
音のない囁きと共に、大河さんが私の舌先をぞるんと舐めた。
「――っ、ふぅぅ……っ!」
瞬間、私はブルブルブルッと竦み上がるみたいに身体を震わせる。
――きもち、いい。
「ぁ、ふぁ……」
「おお、すっごいトロ顔」
跨いでいた彼の膝にへたり込んだ私を見下ろし、大河さんは感心したように言いやった。
まるで血管の中に生まれた電気の粒が、あちこちでパチンッパチンッと弾けるような、僅かに痛みすら伴う情動を感じる。
これが欲情というものだと、誰に教えられるでもなく自覚した。
「……はは、キスしただけでこんなに濡らしてんの?」
「ひゃあっ」
性急な動きで、大河さんの指がショーツの隙間から侵入してくる。
暗い部屋の中で、彼の瞳がぎらりと光った気がした。
「漏らしたみたいになってる。キスがそんなに悦かった?」
「は、はひ、悦かった……です」
「おまんこも悦くしてほしい?」
「っはい、してほしいです……っ」
「ふふ、そんなに素直で、そんなに何でもYESって言ってると、いつか痛い目見そうで心配だなぁ」
「あっ!んっ、ぁ、あっ」
彼の親指が円を描くようにしてクリトリスを擦ってくる。
強く押し潰すようなやり方ではなく、勃ったクリトリスの芯を弾くような、絶妙な動きだ。