人が恋愛対象にするのは異性のみでなく、同性もあれば物であったりする。
さまざまな恋愛の形があるけれど、私が恋愛対象とする物も人じゃない。
私はチサ。
現在大学2年生で、20歳の誕生日を先月に迎えたばかりだ。
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「チサ」
呼ばれて振り返ると、友達のリエが後ろにいた。
「おはよう、リエ。課題のレポートやった?」
「結構面倒だったよね、あれ。ところで、チサに渡したいものがあってね」
リエが透明の袋にはいったままの、未開封のCDを私に手渡した。
「え?これ、見つかったの?」
「昨日たまたま行ったお店で見つけた。チサ、これを探してたでしょ?」
「ありがとう、リエ!いくらだった?」
「いいよ。チサに一昨日立て替えてもらった本代をまだ返してないし。その代わりということで」
「でも、こっちのCDの方が高いんじゃない?」
「同じくらいだよ」
リエが私にくれたCDは、とある恋愛シミュレーションゲームの男性キャラクターそれぞれのボイスドラマが収録されているものだ。
人気の声優さんが多数揃っていることもあって店頭に並んでもすぐに売れてしまい、購入が難しくいことからファンの間では幻のCDとも言われている。
私とリエは声優大好き仲間だ。
ただしリエはアニメ好きであり、声優イベントにも行く。
対して私は声のみにしか興味がない。
アニメやゲームはもちろん好きだけど、あくまで声さえ聴くことができれば良くて、声優さんの顔や姿には全く関心がない。
そして私が恋愛対象とするのは「声」だったりする。
「動物性愛とか対物性愛は聞くけど、声性愛は初めて聞いたよ」
リエは笑った。
「自分でも自覚した時はびっくりだったけどね」
私も笑って返した。